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流行を追ってはいけない!

ビジネスにおいて重要なことの一つに、時流を読むということがある。
時流というのは、その時代の中での大衆の傾向や風潮を指す言葉だが、10年前の常識が現在の非常識ということがあるように、ビジネスを成功させるためには、その時々の時代の流れに合わせた波を読まなければならない。
時代背景や社会事情、文化的背景、政策、法律改正など、時流には様々な要素があるが、時流が一番分かりやすく社会に反映されたものが流行ではないかと思う。
ただし、流行の波に乗るのと、流行を追うのは大違いである。まして、流行に流されるなんてのはもっての他だ。ビジネスにとって大事なことは、流行を読むことなのである。

サーフィンに例えると分かりやすい。あまり良い波でなければ見逃すことも必要であるし、より良い波に乗るためには、波に逆らって泳ぐこともあるだろう。その上で、一番自分が乗りたい波を見つけて、ここぞというタイミングで乗るのだ。

ビジネスにとっても、その波が大きいのか小さいのか、長く続くのかすぐに収まるのか、しっかりと見定めなければならない。
もし、その波が、一時のブームに終わらず、時代の波に合わせてどんどん大きくなる波なのであれば、今は小さな波であっても、その波に乗ることは重要かもしれない。しかし、大きな波だと期待して乗ったら、すぐに小さくなってしまう場合もある。ビジネスにおいては、そこを見誤って中途半端な波に流されてしまうと痛い目をみることになるだろう。

つい数ヶ月前まで、『CHANGE』というキーワードを使ったコピーが街中に溢れていた。
しかし、オバマ当選に沸いた1月から半年が過ぎた今でも、数ヶ月前と同じように、『CHANGE』というキャッチコピーを見かけることがある。そのキャッチコピーは、今でもキャッチコピーとしての効果を生み続けているのだろうか。時流を生かしたコピーは常に新鮮でなければならない。つまり、何ヶ月も残るような商品やポスターのキャッチコピーなどに、一時の流行に関するキーワードを使ってはいけないのだ。

同じような例として、『婚活』というキーワードがある。
婚活というキーワードは、書籍『「婚活」時代』で大ブレークし、この2ヶ月くらいの間、婚活というキーワードに便乗して、婚活ビジネスを始めた人を目にする機会が増えた。確かに、私の周りにも結婚を前提にした出会いを真剣に考えている女性が何名かいるので、婚活をキーワードにしたビジネスを行えば、興味を持つ人は沢山いるかもしれない。しかし、そのビジネスを今から初めて、1年経過した後にも、今と同様のインパクトを与えることが出来るだろうか。

そこまでを見極めて、短期集中型のビジネスとして、小さな波(一時の流行)に便乗するのであれば良いだろう。もしくは、今の時点で一気に仕組みを作って、それをベースにしてビジネスを変化させていこうと考えるのであれば、それもまた良いだろう。
しかし、何も考えずに、小さな波に乗ってしまうと、その波が過ぎ去ってからが大変である。

現に、私の元には、社名に婚活という言葉を含んだ新規ビジネスの相談がいくつか舞い込んだが、もし、彼らが婚活というキーワードを小さな波と捉えて、それに便乗して勢いをつけるつもりで会社を立ち上げるのであれば、少なくとも、社名に婚活という言葉は使わないだろうし、婚活の波に便乗する時点で、次なる波を見定めているだろう。
しかし、実際には短絡的に捉えている方が多いようで、今、注目を浴びている『婚活』というキーワードを使えば、ビジネスがうまくいくのではないか?ぐらいにしか考えていないようである。

私は、PRを考えるときに、映画の例を挙げることが多いのだが、『時流』という点でも、映画ビジネスは参考に出来ることが多そうだ。今回は、ちょっと変則的な時流の使い方をいくつかご紹介したい。

以前、宮崎駿監督が話されていたのだが、今から何十年も前から日本にある、お風呂に浮かべるブリキの金魚のおもちゃが、『崖の上のポニョ』のポニョのモデルだったという。
宮崎駿監督によると、映画を作るには何年もかかるから、流行っているものを追いかけては、完成した時には既に古くなってしまっている。だから流行を追いかけてはいけない。ポニョのモデルになったブリキの金魚は、昔からありふれた誰でも知っているものだから、映画のモデルにしたということである。
どうだろう?先ほどの『CHANGE』や『婚活』の話に似ていないだろうか。

また、あえて時代の波に逆らうという意味でも宮崎駿監督の言葉で参考になるものがある。

近年、日本アニメの高いCG技術が世界的に評価される中、『崖の上のポニョ』は、一切CGは使わず、昔ながらの絵コンテですべてを手書きで作った映画だ。
崖の上のポニョは、水の中の雰囲気をメインターゲットである子供たちに、よりリアルに伝えるために、あえてCGという最先端技術はつかわず、最近のアニメの常識とはまったく逆の手法で、昔ながらの手作業を選択したのだ。

ビジネスにおいて、常に流行に乗り遅れないように見張っていなければならないのは、結構辛いことだ。その点、流行と逆を行くと考えていれば、ある程度の流行には振り回されずに、自分の道を突き進むことが出来る。

宮崎監督によると、ジブリがここまで生き延びてきたのは、常に流行とは逆の方向を選んできたからだそうだ。マーケットを独占したいとかいう気持ちは全然ないから、気まぐれなマーケットに付き合うよりも、きちんとした仕事をして、きちんと受け止めてくれるお客さんと出会いたい。自分たちは周りに振り回されずに流行の逆をやっていけば良いから楽だった。ということである。

しかし、経営者に限らず、誰にとっても、流行に捕らわれず流行を無視するのは簡単な事ではない。多くの人にとって、他の人と違うことは一番の恐怖であり、他の人と一緒のことをしていると安心なのだ。

スタジオジブリにとっても、時代の逆を選択するのは、最初から簡単に出来たことではなかったはずである。しかし、この取り組みこそが、宮崎駿監督の生き様と言えよう。

この宮崎監督の生き様こそが、自分の信念を貫くためには、時代の波に乗ることだけが答えではないという、模範解答ではないだろうか。

流行に乗った話題づくりは、PRの常套手段だが、あえて流行の波に逆らうことは、PR視点で考えても、大きな反響を得ることがある。なぜなら、流行とは常に流動的に変化するものだからだ。

現に、『崖の上のポニョ』は、CGを使っていないという事を多くのメディアで取り上げられた。宮崎駿監督の一貫した信念をテーマに、制作に関するストーリーが出来上がり、多くのメディアで、宮崎駿監督のインタビューが取り上げられたのだ。
もちろん、スタッフのみなさんにとって、CGを使わない、手作業でのアニメ制作における困難は並大抵のことではなかっただろう。しかし、CGを使わなかったことでのメディア露出による、PR効果の恩恵は計り知れないだろう。

同じように、時代の波にあえて逆らうことでPR効果をあげた成功事例は、他にも沢山ある。
例えば、狂牛病問題で、大手の牛丼チェーン店が、どんどん牛丼から撤退し、牛丼以外の商品開発に力を入れている中で、吉野家はあえて牛丼にこだわり、1日限りで牛丼を復活させたり、競馬場の中の店舗などごく限られた店舗でのみ、牛丼メニューを継続させたりと、他の牛丼チェーン店とは全く逆の試みを継続していた。
そのことが、メディアに大きく取り上げられ、多くの牛丼チェーン店が、狂牛病問題でブランド価値を下げる中、吉野家は牛丼屋としての信念を貫いたことを牛丼ファンの人達から高く評価され、ブランド価値を更に向上させることが出来たのだ。

マクドナルドもまた、時流の逆をいく戦略で大きな大きなヒットを打ち出した。
近年の健康ブームに伴い、多くの食品業界でヘルシー路線での商品開発が積極的に行われ、ハンバーガー業界においても、ヘルシー素材やオーガニック素材を全面的に打ち出した商品開発が盛んになっていた。
そんな中、マクドナルドでは、メガマックという、健康ブームとはかけ離れた商品を打ち出して、大きな反響を得ることに成功した。メガマック発売当初は、メガマックの販売数を限定数にし、朝からマクドナルドにはメガマックを求める列が出来た。
当初、限定数だったメガマックも、その後は、期間限定の定番メニューになったり、以前からの期間限定商品である月見バーガーにも、メガ月見を登場させたりと、メガマック戦略は、最近のマクドナルドのPR戦略における大きな成功事例となった。

今回は、あえて時流に逆らうということをテーマに、いくつかの事例を含めてコラムを書いてみたが、みなさんのビジネスでも、時流を逆手にとった戦略を考えてみてはどうだろうか。

また、どうしても、アイデアが浮かばないという時は、スタッフのみなさんや周りの人達の意見を聞いてみると共に、ご自身の業界とは全く別の業界にいる人に相談をしてみても良いだろう。

そして、もし『これは!』というアイデアが浮かんだ時には、ぜひご一報を頂きたい。
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