
Canon EOS-1Ds Mark2 + EF17-40mmF4L
2008年8月1日
ベーリング海・セントローレンス島『ギャンベル』
斜傾45度はあるだろうか、壁のような砂利のビーチに激突するかの様にテンダーで上陸し、見物に来ていた村人と感動のハグを交わした。
まさに三度目の正直である今回の上陸。我らの行く先を妨げる風と波を打ち破り、念願のギャンベルへ上陸した今回の感動は旅の中でも一段と大きかった。
今回ギャンベル上陸の最大ミッションである、「ユカさんに会うこと」。三度目上陸の朝に電話したときはなんとユカさんは不在だった。
しかし、それでも数時間後に上陸したときには戻っているかもしれない、という願いを胸に我々は上陸へのアプローチを強行したのである。
上陸後、感動した勢いで村人にディーゼルが欲しいと空のポリタンク数個を見せて手助けをお願いし、給油所へポリタンと共に連れて行ってもらうことに。
当然、道路というものは存在しないのだが、砂利のビーチから集落までのだだっ広い土地は「誰か」が付けた道筋をまた誰かが走り、そしてそれを相乗して走りつづけ、気が付けばそこは「道」になっていた。という感じの「道みたいな」道がこの町中に入り組んでいた。
ギャンベルはこれまで見てきたイヌイットの村の中でも土地を余裕に使い、同じ形をした家屋が間隔に余裕をもって建て並べられている。やはり、孤立した町だからなのか、行き交う人皆に手をあげて「Hi !」と挨拶をしてゆく姿をみると、この村一つが一つの家族という感じがする。村のいたるところに鯨の骨が放置されており、現役のクジラ猟の町なんだということがわかるのだが、鯨猟、解体、肉の分配は村人総出の協力が必要であり、ここでこの日々の絆の結束力が発揮されるというわけなのかもしれない。
さて、スーパーの横にポツンと置かれた給油小屋で、ディーゼルをポリタンへ入れているところ、小柄な女性がバギーに乗って近づいてくる。イヌイット民族は日本人に似ているとは言われるけれども、その雰囲気はまさに別物、明らかに日本人であり、一発で「ユカさん」だとわかった。そして、案の定彼女こそ我々が会いたかった人、ユカさん本人であった。我々は握手と感動のハグを交わす。どうやら、さっき飛行機で戻ってきたらしく、村人が「またセールボートが来たよ」と噂していたので、まさかと思いきや、そのまさかであった様である。
ついさっきまではノームにある眼科医へ子どものために予約へ行っていたらしく、その帰ってきた直後だった。
ユカさんは愛知県安城市出身で、今は二児の母である。ユカさんは典型的な日本人女性の雰囲気をもっており、我々にとってもとても親しみやすい方であった。しかし、そんな彼女も空手では「段」を持っており、さらにはバスケットボールが出来るなど、色々な意味で「強い」女性である。ちなみに、その「黒帯」を生かしてここで子ども達に空手を教えているそう。
我々はユカさんの自宅へお邪魔させてもらい、お土産として持参した京都祇園の「おかき」とユカさんの振舞う緑茶でお茶会になった。猛烈に元気溢れる二人の子ども達と遊びながら、色々とここでの生活での写真をユカさんのパソコンで見せてもらった。野鳥の楽園であるセントローレンス島ではその種類多様な野鳥はもちろん、キツネやセイウチ、クジラの写真が多い。写真の中にはこの10歳にも満たない男の子がライフルで仕留めた大きな獲物が写っている写真もあり、嬉しそうに僕達へ紹介してくれた。そして、実際にそのライフルも見せてもらい、手にとる。大人のライフルより一回り小さいライフルではあるが、それを使いこなすというのも凄い。日本では非・常識的ではあるが、やはり自然と共に暮らす民族ならではであるのかもしれない。
このセントローレンス島へイヌイットの仲間入りを果たしたユカさん。アラスカとの縁の始まりはやはり写真家・星野道夫の写真集からであった。星野道夫の写真集に魅せられ、ホームステイするためにこの地へ訪れたのだが、ここで今の旦那さんと知り合い、結婚へと至った。すでにこの世にはいない写真家・星野道夫ではあるけれども、今でも多くの人に影響を与えつづけ、僕もその内の一人である。
人々の人生へ運命のキッカケを与える写真家は偉大である。僕もそんな写真家を目指して頑張っていきたい。
今回のセントローレンスは我々にとって導かれたものだったかもしれない。一度目よりも今回の方が心身ともにアラスカへの「慣れ」が整っていたし、三回目にしてはちょうどユカさんが戻ってきた直後だったため、二回目のアプローチで上陸していては会えなかった。
たった二時間弱の慌しい訪問ではあったが、それに合ったとても濃厚で充実した時間を我々は得られることができた。
そして、ユカさんをはじめ、セントローレンス島のギャンベルにとって、ジョン・タークのカヤックによるギャンベル上陸、関野吉晴「グレートジャーニー」のベーリング海峡自力横断拠点に次いでヨットによるギャンベル上陸という新たな「珍」記録が刻まれたのである。
Posted by: yuki - --------------------------
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